28.里帰りとおっさん―1
目の前に広がる広大な大地。
緑の無い赤茶けた大地には、傷痕のようなヒビ割れが無数に入っていた。
それは一見、大地が枯れ果てたことを示すような、不気味なパノラマだ。
だが日が沈む夕暮れ時になると、高地から見下ろす世界は、燃えるようなオレンジ色と安らかな群青色のグラデーションに彩られる。
その世界の大きさに、キットとサリエラは圧倒されていた。
「ス、スゲースゲースゲー!! ここが『イルスフィア』!? 親父の生まれた世界なのか!」
「これほどまでに広い平地は、『アガスフィア』では見たことがありませんね……世界の七割が陸地で占められているというのは、本当なのかもしれません」
二人の感想を聞いて、ひとまず『イルスフィア』が受け入れられて良かったと、グルゥは内心胸を撫で下ろしていた。
「それじゃ、俺様は“ラグランジュ・ポイント”に戻るぜぃ」
そう言ってグルゥの肩から飛び降りたのは、どこかで見たことがある紫色のイモムシである。
「分かった、またなー!」
「ム、ムシは苦手です……早くどっかに行ってしまいなさい」
正反対のリアクションを取りつつも、二人は紫色のイモムシに別れを告げた。
攫われたミノンを探すために『イルスフィア』にやって来た、グルゥとキットとサリエラの三人。
“異世界転移”までの間に何があったのか――話は少しだけ前に遡る。




