表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
266/984

27.世界の終わりとおっさん―11

 がはっ、と血を吐いたミノンの体から力が抜け落ちて、光の翼も消えて無くなる。


「“スフィアキー”は、『ベリアル』様が頂いていくぜ」


 満月をバックに浮かんだのは、禍々しいシルエットだった。


 空に浮かぶ赤毛の長髪の男。


 その背中には歪な形状の黒い翼が生えていて、絶えずはためき男の体を支えている。

 ミノンを貫いた腕は、途中から赤茶けた色に変わってゴツゴツと太くなり、先端には鋭い爪が生え揃っていた。


 『傲慢』を司る『ベリアル』の血統。

 竜化の力を持つ魔人の血族だとグルゥは認識していたが、それが何故この場にいるのか、グルゥには理解できなかった。


「貴様、ミノンをどうするつもりだッ!?」


「“躾”だよ。人をいきなり爆発に巻き込むような子には、ちゃあんとお仕置きをしてあげなきゃね」


 意識を失ったミノンは、持たれかかるように赤毛の男に体を預けていた。

 このままではいけないと――空に伸ばしたグルゥの手は、空を切るだけだ。


「おっと、『ベリアル』の血統ともあろう者が、名乗りを忘れていたとはね。俺は将軍、ウルヴァーサだ。じゃあな……『サタン』のおっさん」


 ウルヴァーサは手を挙げると、それを合図に、何も無かったはずの虚空に巨大な“口”が現れる。


 ドラゴンの頸部のようなそれは、大きく口を開けると、二人を一飲みして霧散していった。

 今までそこに居たはずの二人の姿は無く、あるのはただ、ミノンを包んでいた緑色の光の名残だけだ。


「ミノ……ン……? ミノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!」


 グルゥの叫びが、夜風を震わせ、闇の中に虚しくこだました。




 この夜の一件は後に――“破壊神の炎と創造神の雨”として、アルゴ公国内のみならず他の公国、果てはジルヴァニア王国を揺るがすほどの大事件となるが。

 失意の真っ只中にいるグルゥは、未だその動乱の予感に、気付かずにいるのだった。

第5章 復讐とおっさん

第1部 アガスティア動乱編 ―完―


突如として奪われたミノンと、彼が残した子守唄の謎。

その謎を解くために、グルゥは『イルスフィア』へ戻ることを決意する。

そこで出会う新たな仲間、そして異世界勇者の使命の真実とは――


NEXT → 第2部 イルスフィア騒乱編 ―開幕―

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ