27.世界の終わりとおっさん―10
「ミノン……なのか…………?」
光の翼だけでなく、ミノンの体からは、フォルによく似た緑色の光が発せられていた。
それが街を覆って、次々と傷ついた人々を苦しみから救っていく。
ミノンは集中しているようで、グルゥの問いには答えずに、目を閉じたまま歌を口ずさんでいた。
「故郷――――思えば――――」
どこかで聞き覚えのある歌詞に、グルゥは思わず耳を疑う。
そんなはずは、ない。
三人のために自分が子守唄を歌ったことは、一度も無かったはずだと。
「恋いし空――――見上げる――――」
だが、ミノンの口から流れるその歌詞とメロディは、確かにかつて、ムジカがノニムのために歌っていた、子守唄だったのだ。
「帰るべき場所に――――変わらぬ灯火」
すうっと瞼を開けるミノン。
透き通った瞳の奥が、エメラルドグリーンの輝きを放っている。
その瞳は、今までの無垢な少年のものとは違い、やるべき使命に立ち向かう男の目になっていた。
「どうして、その唄を……!?」
『サタン』の血族、それも一部の地域でしか知られていない子守唄を歌ったミノンに、グルゥは驚きを隠し切れずにいた。
緑色の光を放出しきったミノンは、月明かりを背にしながら、中性的な笑みを浮かべグルゥに微笑みかける。
「お仕事、ご苦労様」
そのミノンの細い体を、後ろから貫く一人の男がいた。




