27.世界の終わりとおっさん―9
声が……聞こえたような気がした。
遥か頭上から。
それも、幼くあどけない、純真な少年の声が。
「……う、うぅぅ…………?」
空から降る、緑色の光。
優しい雨のように振り注ぐ光が、真っ赤に染まった世界を、穏やかな緑に変えていく。
「フォルは“可逆性”なんだ。命が失われる前であれば……まだ、ボクの力で繋ぎとめられるかもしれない」
グルゥの頭上には、ミノンが両手を広げて浮かんでいた。
まるで天使のように、薄い緑色の光の翼を生やし、傷ついた世界に癒しの光を降らしていく。
光はキットの体にも降り注ぎ、焼け焦げた肌や、胸に空いた傷が、少しずつ、少しずつ治り始めていく。
黒い炎に包まれた地上も、緑色の温かな光が、少しずつその炎を打ち消していった。
***
ガレキの隙間にも光は入り込み、潰された子供たちは、まるで繭に包まれるようにフォルの結晶に囲われていく。
成長したフォルの結晶は、そのまま力強くガレキを押し返し、結晶に閉じ込められた子供たちの傷が癒えていくのを見て、ブランは言葉を失うのだった。
「こんな……こんな奇跡が…………!?」
サグレスタワーの遥か上空。
先程まで炎の柱が立ち上っていたはずのそこには、今は煌々と輝く緑の光が集まっている。
まるで生命そのものの輝きのようだと、慈愛に満ちた光の輝きを見て、ブランの目からは自然と涙が溢れていた。




