27.世界の終わりとおっさん―7
炎の柱は、遠く離れたニサードからでも観測されていた。
「な、なんじゃあ、あれは……!?」
突然、真昼間のように明るくなった世界に驚いて、家の外に飛び出すカッツォ。
サグレスの方角に光る柱のようなものがあるのを見て、慌てて膝をつき、両手を合わせて祈りを捧げた。
「何をしちょるんじゃ!?」
「ば、ばかもんっ!? お前は知らんのか!? 遥か昔、『アガスフィア』と『イルスフィア』の全面戦争があった際、争いを終わらせたのは『終滅の炎』と呼ばれる、決して消えない炎だったそうじゃい! 死んだじーさんが言ってたんだから、間違いねぇ!!」
そう言って一心不乱に祈りを捧げ始めたカッツォを見て、ツンナはやれやれと肩をすくめる。
「それが本当なら……今さら神頼みなんかしても、ワシらはもう終わりじゃって」
ツンナは炎の柱を見て、潔く諦観していた。
ただ、その炎の柱の色合いから感じる深い悲しみに、いつの間にかその目からは、一筋の涙が流れていた。
***
チャポン、とテュルグナの港の近くの海から、一人の女の頭が飛び出していた。
浅黒い肌の女は、チョロチョロと舌を出しながら、突如として現れた炎の柱を見物する。
その舌の先端は、二つに割れていた。
「あの力……『サタン』の血統が覚醒に至ったというのか……? まさか、あの時気まぐれで助けた魔人が……報告せねば」
女は再び海中に潜ると、一心不乱に底の方へと泳いでいった。
テュルグナの海で正体不明の人型の影が目撃されるようになったのは、少し前からのことであった。




