27.世界の終わりとおっさん―6
ブランは焦っていた。
サリエラの告発をモニターで見て、早速、王国への報告文書を作成しようとした矢先のことである。
「これが……グルゥさんの力なのか……!?」
宿から飛び出すと、高温でドロドロに溶けた石材が河のように流れていて、それに触れた多くの人々が、黒い炎による逃れられない苦しみに悶えている。
「サリエラは……!?」
サグレスタワーは斜めに傾いていて、倒壊するまでは時間の問題のように思えた。
そして先程まで見ていたモニターの映像が確かならば、サリエラはまだサグレスタワーの中に残っている。
「くっ……!?」
しかしサグレスタワーに向かおうとしても、既に街は炎によって分断されていて、思うように進めないのが現状だ。
また騎士として、苦しんでいる人々を放って妹を助けに行っていいのか、ブランの中には苦悩している部分もあった。
「おい、誰か助けてくれ! 建物が崩れて、ウチのガキたちがっ!」
煙草を咥えた無精髭の男が、大きな声をあげて助けを求めている。
倒壊したガレキの下からは、確かに多くの血が流れているように見えた。
「……チィッ!!」
ブランは迷ったが、すぐに助けを求めている男の下へ向かった。
二人はガレキの除去を始め、一人でも多くの子供の命を救おうとする。
しかし、そんな二人を嘲笑うかのように、巨大な炎の柱が、サグレスタワーの上から立ち上った。
「あなたにサリエラを任せたのは……間違いだった……!!」
自然と救助の手が止まり、二人は魅入られたように炎の柱から目を逸らせなかった。
世界が終わるとしたらこんな光景なんだろうなと、ブランは動かなくなった頭の片隅でぼんやりと考えていた。




