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27.世界の終わりとおっさん―4

 標的をロストしたことで、行き場を失ったグルゥの熱線は、虚空に向かって照射される。


 まだ、悲しみは癒えなかった。

 まだ、絶望が心を閉ざしていた。


 心臓の鼓動は早鐘のように打ち続けられ、体内で処理が出来なくなった熱量が、そのまま熱線となって撃ち出されている。


 つまり鼓動が落ち着くまで、グルゥ自身にも熱線を止める方法は無かったのだが、人の心を失い獣に堕ちたグルゥは、ただ本能のまま破壊をし続ける。


 その胸の内には、ただ漠然と破壊に対する肯定の意思があった。


 この街を破壊し尽くさないと。

 人の欲望に満ちたこの街を消滅させないと、悲しみの連鎖は終わることはないのだと。


「――ァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアァァァァァァァァァ――」


 グルゥの熱線はついに眼下へと向けられる。

 縦に横に、熱線によって縦横無尽に切り裂かれる世界。


 炎に焼かれた人間は体を失うが、すぐに死ぬことも出来ず、まるで命を弄ぶかのような黒い炎に苦しみ続けることになる。


 地獄だった。

 地獄としか言えない光景が、そこには広がっていた。


 黒い炎は徐々に広がりを見せ、サグレスタワーに集まっていた人間だけでなく、関係のない人々の住処までを焼き尽くした。


 親と離れ離れになった子供が、炎に巻かれて泣き叫んでいる。

 子供を身ごもっている妊婦が、崩れた建物に足を挟まれて動けなくなっている。


 本来であれば率先して人々を救うはずのグルゥが、今はただ、絶望の中で破壊行為を続ける人間の――いや、生き物全ての敵となっていた。


「もう……いいんだ、よ……おや、じ……」


 その姿に――瀕死だったはずのキットが、最後の力を振り絞って、グルゥの胸の柔らかい毛の中に飛び込んだ。

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