26.続々・復讐とおっさん―11
「あり…………が…………」
キットの唇が弱々しく動くが、その体からは瞬く間に力と温かみが失われていった。
遺そうとした言葉は、ついに最後まで紡がれることはなかった。
「な、なぁキット、冗談だろ? 嘘だろ? そんな……。嘘だって言ってくれよ、なぁ」
キットの体を揺するが、その瞼が開かれることはない。
グルゥはキットを横たえると、その体を上に突っ伏して、声を殺して泣いた。
「頼む……頼むよアキト。君の“完全回復”で、キットを生き返らせてくれないか」
「無理だね」
「じゃ、じゃあ“瞬間移動”で治療が出来そうな人を連れて来るだけでもいい。頼む、何だってする、私の命だって好きなようにしていいから……お願いなんだ、なぁ」
「そうじゃなくてさ、根本的に無理なんだよ。死んだ人間を生き返らせるなんて。そんな都合の良いチートスペル、レベルが上がればあるのかもしれねーけど、今の俺は持ち合わせてねー」
「誰か……頼む、誰かっ」
グルゥは立ち上がると、バルーン船に向かって両手を振り必死に助けを求める。
何も反応を得られないのを見て、遥か地上の観衆達にも手を振ったが、伝わらないどころか嬉しそうに手を振り返す者もいた。
「ああ……なんという……ことだ……」
ここまできて、キットを助けられる者が、誰もいないとは。
「なんということだ……なんということだ……なんということだ……」
再びキットの下に戻ったグルゥは、ついに嗚咽を堪え切れずに、大きな声をあげて号泣した。
「ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ……っ!!」
「ハハッ、想像以上に致命的なダメージみたいだな。そのガキの命を奪ったのは」
残っていたフォルの欠片が、一斉に砕けてその輝きを失った。
心臓の鼓動が早くなる。
その感情は『憤怒』を超えた、それ以上の――




