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26.続々・復讐とおっさん―10

「うそ、だろ……こん、なの……?」


 呆然とした表情で、キットは自身の胸から流れ出る血を見つめていた。

 せっかく動き出した小さな心臓は、傷つけられ、瞬く間に力を失っていく。


「……あ? ……あ……あ…………?」


 何が起こったのか、グルゥはまったく理解できなかった。

 ただ、自分の腕の中でキットの胸が貫かれ、その命が儚く散ろうとしている。


 自分の体の中央にも痛みがあるということに気付いたのは、だいぶ時間が経った後だった。


「いやーマジでさ、奇跡ってあるモンだな。俺だって、さすがに今回はもうダメだと思ってたぜ? MPも使い切ってたし、あのまま落ちていくしかなかったんだ。だけどまさか、フォルの方から俺のところにやって来てくれるとは」


 軽快な口調で語られる顛末。

 光の剣が引き抜かれ、グルゥの腕の中で、キットの胸部からの夥しい量の出血が始まった。


「血、血を、止めなくては、血を……っ」


「おいおい、素っ裸でそんなテンパって、めちゃめちゃウケる光景ジャンよ。っておい、聞いてんのかグルゥ。おーい、もしもーし」


 いくら手で押さえても、キットから流れ出る血を止めることは出来なかった。

 応急処置に使えそうなものも付近には無い、万事休すの状態だ。


「お、や…………じ…………」


 薄く目を開けたキットは、口から血を吐きながら、何かを伝えようと必死に唇を動かしていた。


「いい!! そんなことは後でいいから、喋るんじゃない、キット!!」


「で、も…………さい、ごかも…………しれ、ない……じゃん…………」


 最後?

 いったい何が、何の最後だというのだ?


 混乱したグルゥの頭では、キットの言葉を理解することが出来ない。

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