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3.賊・孤児とおっさん―10

 獣のような低い唸り声をあげながら、グルゥは若者の前に立つ。

 その目には、子供たちを守ろうとしていた時の優しい面影はない。


 今はただ『憤怒』に任せて破壊と殺戮を愉しむ、化け物の目に堕ちていた。


「後は……貴様だけだ……!!」


 見た目も大きく変化していた。


 鋭く伸びた黒い角に、全身を覆う黒い剛毛。

 大きく背中を曲げ、時折地面に手をつき獣のように歩く姿は、グルゥが人の理を超えた存在であることをまざまざと示していた。


「八つ裂きにしてやる……ッ!!」


「ヒ、ヒィィィィ!! ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!! 許して、許してくださいぃぃぃ!!」


 涙と鼻水を垂れ流し、失禁までして必死に命乞いをする姿は、普段のグルゥであれば哀れみを持って接するところだろう。

 だが、今のグルゥの心は『憤怒』の炎に焼かれ、懇願する姿も火に薪をくべる材料にしかならなかった。


「どうして、もっと早くそうしなかった。同じように哀願した子供たちの思いも、今まで散々蹂躙してきたのだろう」


「仕方なかったんだよぉっ!! 俺だって二十歳はたちになったばっかで、お館様からの初めての仕事だ、断れなかったんだ!! 頼む、いっぱい反省するから、罪は償うから、命、命だけは……っ!!」


 恐怖により過呼吸の発作を起こした若者は、口元を押さえ、おぇぇぇぇと激しく嘔吐する。


 これまでの威勢と比べれば、あまりにも惨めな姿だ。

 だが、グルゥが下した裁きは、慈悲の欠片すら無いものだった。


「無駄だ。反省する? 償う? そんな糞の価値すらもないような行為で、傷つけた人々の心が救われるというのか? それは貴様が蹂躙した子供たちが決めることだ。その子供たちが逃げ出した以上、貴様にはもう、未来永劫、存在する価値もない」


 ゴムボールでも掴むかのように、グルゥはびっしりと毛の生え揃った大きな手で若者の頭を掴んだ。

 逃げられなくしたところで、鋭い牙を剥き出しにし大きく口を開けると、ついに若者は恐怖で失神する。

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