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26.続々・復讐とおっさん―6

 だがそこで――ゴブリンドラグーンは妙な違和感を覚え、足の動きを止めた。


 初めは、何かの勘違いかと思えた。

 爪の先に小石がはまったような、その程度の小さな感覚。


 だがその痛みは徐々に鋭さを増していき、気が付いた時には、足の小指が力任せに引き千切られていた。


「な――」


「私は……娘を守るために、こんなところで倒れるわけにはいかないのだ!!」


 はっきりとした意識の覚醒と、魔獣化の両立。

 フォルの手助けがあったものの、それを果たしたグルゥにとって、急造のドラゴンなどまるで相手にならない粘土細工のようなものに見えた。


 ゴブリンドラグーンが驚いて足を離したところで、黒い剛毛に覆われたグルゥは、跳び上がってその背中に回り込む。

 全身の筋肉が隆起し服が破れて、猛牛のような姿に変貌したグルゥは、ゴブリンドラグーンの右の翼を両手で掴むと、力任せに引き千切った。


「ぐああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 轟く絶叫と、噴水のように吹き出る緑の血。

 それは雨のように遥か階下に降り注ぎ、血で濡れた人々は、まるで現実と思えないものを見るような目で、ぼんやりとモニターに映し出されたグルゥの姿を見ている。


「次はこちらだ……!!」


 グルゥは間髪入れずに左の翼も引き千切った。

 その次は尻尾を噛み千切り、あれだけの巨体であったゴブリンドラグーンが、あっという間に魔獣化したグルゥと同じ程度のサイズになっていく。


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 ゴブリンドラグーンは目の前のグルゥに対し炎を吐きつけた。


 だが、『サタン』の血統はそもそも高温の血を体内に宿すもの。

 焼かれることなど何でもないかのように、炎を浴びながら仁王立ちを続けた。

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