26.続々・復讐とおっさん―5
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
グルゥの絶叫がこだまする。
いくら頑強な体といえど、ドラゴンの鋭い牙の前では一溜まりもなかった。
筋肉がぶちぶちと千切れ、骨が粉々に砕ける音がする。
鋭く太い牙に食い千切られたグルゥの右腕は、皮だけで繋がっているような、無残な状態となっていた。
「ハァ、ハァ、ハァ……っ!!」
激痛に意識が飛びかけ、ゴブリンドラグーンの足を支えきれず、ついにグルゥは片膝をついた。
左腕の力だけで足を押し止めようとするが、その圧力は徐々にグルゥの体を押し潰していく。
「諦めろ……その怪我ではもう私の重さを受け止めることも出来まい。その子供のことは見捨てて、真っ向から勝負をしていればまた違った結果もあっただろうに」
「それは、出来ない……っ! キットを見捨てるなんて、そんなことは……っ!!」
「何故だ。どうしてそこまでして、その子供を守りたがる。己の寿命を縮めるだけだというのに」
「そんなこと……決まっているだろう……!!」
ゴブリンドラグーンによって潰される直前。
血走ったグルゥの目には、『憤怒』を超えた別の感情、そんな何かが宿っていた。
「私はこの子の……“親父”だからだ……っ!!」
その時、不思議なことが起こった。
それは明らかに『憤怒』とは違う、心の底から湧き立つ様な感情だというのに。
床に散らばったフォルの欠片が明滅を開始して、『サタン』の血統の力を一方的に増幅させる。
(これは……!? トリカゴのフォルドームに足を踏み入れた際の、あの感覚……!?)
「立派なことだな、魔人の父親よ」
ついにゴブリンドラグーンの足が完全に下ろされ、グルゥの体は潰されて見えなくなった。
きっちりとトドメを刺すように、ゴブリンドラグーンは足をぐりぐりと動かして、グルゥをすり潰そうとする。




