26.続々・復讐とおっさん―3
咆哮をあげるゴブリンドラグーン。
そのあまりの音量に体がすくんで、グルゥは一瞬動けなくなってしまう。
「ま……待てよ」
初めて見るモンスターの姿に戸惑うグルゥだったが、次第に冷静になるにつれ、自分達が危機的状況にあることを理解した。
まず、先程まで一緒に居たキットは何処に行ったのか。
また、中継を行ったサリエラとミノンは、最上階に残っていたはず。
その最上階は今やガレキの山と化し、ゴブリンドラグーン以外に動くものの姿は誰一人見えなくなっている。
全員、ガレキの下に埋まってしまったのだろうか。
早く救助活動をしなければならないと、グルゥは腕に力を込め最上階に戻った。
だがそれは当然、ゴブリンドラグーンと正面から対峙することとなる。
「貴様か、私を完璧な人生を狂わせた元凶は」
ゴブリンドラグーンの言葉を聞いて、グルゥはそれがアルゴ公であったものだということに、初めて気が付いた。
そして、それ故に剥き出しの敵意を受けているということも。
「止めるんだ、こんなこと……自暴自棄になって周囲を傷つけたとしても、何の意味もない。このタワーには、貴様と同じ種族のゴブリンも暮らしているんだろう」
「フン。そんなこと、この姿に変貌してしまえば何の意味も無いことよ。その内に、王国のものが私を捕らえに来るだろう。だが私は、この公国の王で在り続ける。そのためには、邪魔するものは全て排除する。金と権力でなく、暴力と恐怖による支配が始まる時代が訪れたのだ」
そう言って、ゴブリンドラグーンは大きくその翼を広げた。
それだけで夜の空に竜巻のような風が舞い、グルゥはバランスを崩して膝をつく。
その瞬間に、気付いてしまった。
ゴブリンドラグーンの足元、うず高く積もったガレキの下から、キットの右半身が出ていることに。




