26.続々・復讐とおっさん―2
「……なんだよ。死に行く俺を嘲笑いに来たってか」
「お前に、最後のチャンスをやる。己の行いを悔い改め、今一度正しく生きようとするか。それとも、このまま地面へと墜落し、無様に死を迎えるか、だ」
「めんどくせーよ」
ノータイム、一瞬の迷いを見せることもせず、アキトは屋上から手を離した。
「馬鹿者――」
グルゥはとっさに腕を差し出したが、アキトの腕を掴むことは叶わず。
自由落下を開始したアキトは、狂ったように笑い続けていた。
「ギャハハハハハハハハハハハァッ!! グルゥ、お前の思い通りに生きるなら、死んだ方がマシだってのッ!! 残念だったなァ!! この勝負、やっぱ俺の勝ちだわッ!!」
アキトの姿は一瞬で見えなくなった。
それは落下しきったとか、“瞬間移動”を使われたとかではなく、グルゥがたった今居る屋上の真下で、大きな爆発が起こったからだ。
「うおおおおおおっ!?」
突如として足場が斜めになり、自らも地上に落下しかけるグルゥ。
とっさに、上って来たときの要領で外壁に拳を刺し、転落に関しては難を逃れる。
「な、何が起こったのだ」
屋上は完全に粉砕され、階がそのまま一つ無くなって、下に落ちたようになっていた。
もうもうと立ち込める砂埃の中、次第に目に入ってきたのは、力無く輝く無数のフォルの欠片と、全長五メートル近くはある異形のモンスター。
「なんだ、あれは……っ!?」
それは岩のようにゴツゴツとした緑の肌に、尻尾と巨大な翼を生やした、ゴブリンとドラゴンの合いの子のような生物だった。




