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25.続・復讐とおっさん―9

 アルゴ公は放心状態で、ベッドに突っ伏したまま立ち上がることも出来ないようだった。

 抵抗することもなく、意外とあっさりしていたなと、サリエラはホッと胸を撫で下ろす。


 だが――実際は違った。


「ハハ……もう、終わりだ、ハハハ……」


 壊れたように乾いた笑い声をあげるアルゴ公。

 その手には、ベッドの中に隠していたらしい、象牙色の三角形のオブジェが握られている。


「何故、私がこれだけのフォルを私的に使用していたか……分かるかね?」


 アルゴ公の言葉に、サリエラは首を左右に振った。

 気になってはいたことだが……嫌な予感がすると、サリエラはミノンを後方へ下がらせる。


「アルゴ公国はフォルの最大の産出国であると同時に、その研究においても最先端を行っているのだ。フォルは不思議だ、これだけ研究を続けているにも関わらず、その実体については一切正体が掴めていない。ある者は魔力の源と言い、またある者は命そのものという」


 淡々と語るアルゴ公の口ぶりからは、学者気質とも取れる冷静さが見て取れた。

 やはり、単なる金と欲に目が眩んだゴブリンというわけではないらしい。


 サリエラは氷の刃を撃つ準備をしたが、アルゴ公は抑揚の無い無機質な声で話を続けている。


「私はね。その両方とも、正解だと思うのだ。何故ならば……フォルにはありとあらゆる物質に化ける、無限の可能性が秘められている。何故、そのような万物に代わり得る、特殊な力を持っているのか? ……その問いは、フォルの持つ“可逆性”にあったのだ」


 アルゴ公は、手にしていたオブジェを自身の胸に突き刺した。

 同時に部屋中のフォルが明滅を繰り返し、全ての力がアルゴ公に注がれているのが分かる。


「何を――」


「ドラゴンの牙の遺伝子と共に、その可逆性を用いればぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 私はゴブリンキングではなく――ゴブリンドラグーンへと進化を遂げるのだァぁァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 瞬間、最上階で起こる全てを飲み込むような爆発。

 サリエラの意識は、緑の光の中に吸い込まれていった。

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