25.続・復讐とおっさん―7
「……まあいいでしょう。人間に対する扱いをどう判断するかは、この公国の住民が決めることです」
「ほほー! 麗しいレディさん、君は人間のくせになかなか物分りが良い」
「で・す・が。この、私室に蓄えられたフォルの量はなんですか? フォルの不当な私的占有は、王国と定めた条例違反になるはずです」
「フフン。それこそ、多少は見逃してくれたって良いだろう。ジルヴァニア王国の所有するフォルの七割は、我が公国から産出されているのだ。もっとも最近は、生きた魔人の子供から生成する方法が流行っているそうだがね。ちょっとくらい、私が利用したって良いだろう」
いったい、それだけのフォルを何に利用しているのか。
その想像がつかないのが、サリエラに静かな重圧と不安を与えていた。
だがサリエラは、その不安を飲み干すように大きく唾を飲み込むと――振り返って、部屋の入り口に立つミノンに向けてポーズを取る。
ミノンの手には、ここに来る前に調達してきた、小型のカメラが収められていた。
「と、いうわけで、現場からは私、サリエラがお送りしました。サグレスの皆様は、今の公爵の言葉、この現状を見てどう判断されますか? これからどうするかは、全て、あなた方次第です」
何をやっているんだ、とアルゴ公は鼻で笑う。
「放送局にでも持ち込むつもりか」
「いえ、これは既に……生放送ですよ?」
馬鹿なことを言うな、とアルゴ公は大笑いしてみせた。
だが、その直後である。
アルゴ公が先程ひっくり返したモニターから、先程のサリエラの言葉がワンテンポ遅れて、そっくりそのまま流れ始めたのは。




