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3.賊・孤児とおっさん―9

 巨漢は既に気を失っていたが、グルゥの怒りは収まることを知らない。

 まるで木こりが斧を振るうように、巨漢の体を何かの道具に見立て、手近な木にぶち当てては木をへし折っていく。


 そうしてグルゥの怒りのボルテージが上がる度に、グルゥの筋肉ははち切れんばかりに膨れあがり、ゆったりとしていたはずの布服も、筋肉に押し出されるような形でビリビリに破れていく。


 露わになったグルゥの裸は、元々キットに毛深いと言われていたが、今は毛深いというレベルではなく、黒く硬い剛毛が全身を覆っていた。


 この場に居る全員が、ついにグルゥの正体について理解する。


 すなわち、グルゥは人間――『アガスフィア』の住人ではなく、魔人――『イルスフィア』の住人なのだと。


 生まれて初めて見るはずの魔人だが、その理解の範疇を超えた化け物に、泣いていたはずの子供たちは、一人、また一人と逃げ出していった。


 それが、生存本能なのだ。

 この化け物を目の当たりにして、その場に止まり続けることは、自らの命を投げ捨てることと同義なのである。


 だが最後の若者は、その場にずっと残り続けていた。


 勇気ではない。

 ただ恐怖で腰を抜かし、立ち上がれなくなってしまっていたのだ。


「グォォォォォォォォォォォォォ……」


 グルゥは未だに巨漢をおもちゃのように引きずり回し、顔を鷲掴みにし続けていた。


 巨漢の体には無数の木片や石が突き刺さり、全身の皮はベロベロに剥けて、血まみれになっている。

 それでも、時折ビクンと痙攣をしているので、死んではいないのだろう。


 だがグルゥは忘れていた最後の獲物を目の当たりにすると、巨漢が邪魔になったので、ポイと空高くへ投げ捨てた。


「ヒィ……!!」


 若者はグルゥの姿に脅え、へたり込んだまま後退りするが、転がった馬車の車輪にぶつかりすぐに動けなくなった。

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