25.続・復讐とおっさん―5
一方で、サリエラとミノンは最上階を進んでいた。
グルゥが屋上に向かう最中に、窓を割って中に入れてもらっていたのだ。
「辿り着きました、ここですね」
サリエラが訪れたのは、最上階の最も奥に位置している、アルゴ公の私室だった。
そこには鍵が掛けられていたが、サリエラは氷の刃を連発して、強引に扉を破壊する。
「……やっぱり!」
そこに隠されていたのは、数多くの緑色のクリスタル。
純度の高いフォルの結晶だった。
ベッドで寝転がりながらモニターの観賞をしていたアルゴ公は、突然の来訪者に慌てて飛び上がる。
弾みで、台の上のモニターが床の上に落ちていった。
「な、なんだお前ら!? あの魔人の仲間なのか!?」
「理解が早くて結構です、ダストン・アルゴ公爵。……種族としては、ゴブリンキングといったところですか?」
そう――緑色の肌に、ゴツゴツと節くれ立った手足。
アルゴ公の姿はどう見ても人間ではなく、異形のものである。
これが、アルゴ公が人前に姿を見せられない理由。
アルゴ公は、ゴブリンだったのだ。
「だ、だから何だというのだ! ジルヴァニア王国では、亜人の公爵など珍しくもないぞ! 公国の統制は取れている、種族を理由に批判などされる謂れはないわ!!」
黄ばんだ目でサリエラを睨みつけるアルゴ公。
サリエラは深く頷いて、その言葉を肯定してみせた。
「その通り、亜人が人々のリーダーとなる、それは何の問題もありません」
「え……あら、そうなの? なんか人聞きの悪いことを言ってすまなかったね」
あっさりと受け入れてもらったので、アルゴ公は照れたような笑みを浮かべてサリエラに握手を求めようとした。
「ですがッ!!」
が、もちろんサリエラはその手を取ることはない。




