25.続・復讐とおっさん―4
「え……」
唖然とするアキト。
マリモが撃ち貫いたのは、キットを磔にしていた十字架だった。
自由になったキットは膝をついて着地をし、ケホケホと咳をした。
「なん……でぇ……?」
「なんでって、それを分かってないのはお前だけだと思うぜ。いい加減、負けを認めな。お前じゃ逆立ちしても親父には勝てねーよ」
キットはそう吐き捨てると、足早にグルゥの下まで駆け寄っていった。
グルゥに抱きついたキットは、頬の辺りを一生懸命ペロペロする。
「へへっ、来るって信じてたぜ、親父っ!」
「お、お前……! そういうのは後にしなさい、あと一応、今腹の辺りに穴が空いているから……」
変わらぬキットの様子を見て、グルゥはホッと一安心した。
だが、アキトはグルゥに負け、マリモに裏切られ、キットにコケにされたショックで、何も言えないままじっと肩を震わせている。
「おいおいなんだ? もう終わりなのか? つまんねー」
「異世界勇者さんよ、結局お前の負けじゃねーか! 雑魚が!」
サグレスタワーの下からは、心無い人々の罵倒の声がする。
屈辱に打ち震えるアキト。
その目は徐々に正気を失い――狂気にも似た、異様な輝きを灯すようになった。




