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25.続・復讐とおっさん―1

 背後に迫る殺気を感じて、グルゥは大きく息をつく。


「何故だ。何故君は、彼を助けようとする」


 背中越しに問いかけるグルゥ。

 マリモはぐっと息を呑む――答えはすぐに見つからないようだった。


「分からない。分からないけどっ……。そいつにだって良いとこはあったの! 昔は正義感も強くて、いじめられてた私を、上級生なのに助けてくれたこともあって……っ! そんな無様な姿で、死んで欲しくないっ!」


「だが彼は、ここで生き延びればまた他人の命を奪うだろう。君はそれに責任が持てるのか? ……実行をしているのが彼だから、自分には関係ないと思っていないか?」


 グルゥの言葉を聞いて、マリモは大粒の涙を零しながら、それでも弓を下ろさなかった。


「責任がないとは思ってない。でも、私にも止められなかった。こっちの世界に来てから、アキトは増長するばかりで……でも、彼がいないと私たちが生きられないのも事実なんだって!」


 それは、異世界勇者に課せられた、フォルの摂取を続けないと朽ちてしまうという定めのことだろう。


「分からないよっ!! アキトは死んで当然のヤツだって、それくらいのことをしてるんだって、頭ではそう思ってるのっ。でも、こうしてアキトが殺される瞬間を目の当たりにして、それじゃダメだって心が叫んでる。私だって、どうすればいいのか分からないだってェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


 マリモが放った光の矢は、グルゥを僅かに逸れて、屋上に大きな穴を穿った。

 だが、それでもグルゥは身じろぎ一つしない。


 分かっていた。

 アキトとは違い優しい心を持つ彼女が、他人に向けて矢を撃てないことは。


「答えてよ、アキトっ。あんた、本当にこれでいいの? 私達の冒険はここでおしまいなの? 死ぬくらいなら……“本当”はどう思ってたのか、一つくらい聞かせなさいよっ!!」


 マリモの悲痛な叫びが屋上に響いた瞬間。

 意識を失っていたはずのアキトの右手が、ほんの僅かに、ピクッと動いた。

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