24.復讐とおっさん―9
光刃がグルゥの皮膚を突き破り、筋肉を裂き、臓器を貫いた。
グルゥの吐血を浴びて、アキトの顔半分が真っ赤に染まる。
「あーあー……残念だよ、グ・ル・ゥ・さん。せっかくここまでの舞台を用意してやってんのにさ、なんでお預けなんて酷いことするわけ? 俺は気持ちよくヤりたかっただけなの。あんたに復讐を果たせればそれで良かったの。こんな中途半端な結末じゃさぁ……俺も存分にイケないって」
グルゥの体内を抉るように、光刃を左右に揺らすアキト。
グルゥはグッと唇を噛み締めて、痛みによる悲鳴が漏れるのを堪えた。
「お前は……本当に、それでいいのか」
「あ? なに? まださっきの話続けてんの? 言っとくけどさ、俺は今の自分の境遇に、何の不満も持ってないわけよ。そりゃいきなりトラックに轢かれて、気が付けば異世界でデスゲームをさせられて、最初はなんだこの“なろう”のテンプレ展開は、って思ってたさ。でもねぇ、チーレムだったり俺TUEEEだったり、経験してみると意外と病みつきになっちゃうんですわぁ、コレがまた。(笑)。あんたにも経験させてやりてぇぐらいだぜ、最高の勇者ライフ」
拳を握り締め、脂汗をかきながら痛みを堪える。
もっとも恐れていたことが起きたと、グルゥは考えていた。
「お? どうした? 反撃してこねーのかよ。んじゃあ、このまま内臓をぐちゃぐちゃに掻き回しちまうかな。どこまでやると死ぬんだァ、魔人って? 実験してもいいか?」
無邪気な顔でアキトは話し続けていた。
まだ、年端も行かぬ少年――彼の心を、自分の言葉で救えないのであれば――
「すまない、アキト」
アキトを抱き締めていた両腕に、ぐっと力を込める。
隆起した筋肉に挟まれて、アキトはすぐに動けなくなった。
「が……!? は、離せ、離しやがれッ!?」
「こうするしか……ないのだ……っ!!」




