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3.賊・孤児とおっさん―8

「あガッ……ぐォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 雄叫びをあげるグルゥ。

 その時、頭に巻かれていた黒い布が、何かに押し上げられるようにして、はらりと捲れあがっていく。


 頭の両脇に生えていたのは、黒い角だ。

 根元から折れた二本の角が、グルゥの怒りに呼応するように、もの凄いスピードで成長し布を押し上げたのだ。


「うわあああああああああああああああああッ!? な、何なんだコイツはッ!! デ、デブッ、さっさとアイツを押さえつけろ!!」


「で、でも、おではコイツをつかまえてないと」


「キットなんか放っておいていいんだよッ!! まずはあの化け物をなんとかしろッ!!」


 その指示に従い、巨漢はキットをポイと地面に放り投げる。

 だが巨漢にとっては、それが命取りとなった。


「他人の指示だからといって……貴様の行為が、許されると思うなあああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 グルゥの巨躯が宙を舞う。

 獰猛な獣のように、巨漢の顔を右手で捕らえたグルゥは、そのまま巨漢の頭を地面に押し付ける。


 黒土が抉れ、巨漢の体が地面にめり込んだ。


「や、やめ――」


「ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」


 グルゥはそのまま、巨漢の体を地面に押し付けながら引きずり回した。

 その勢いは止まることを知らず、木々を薙ぎ倒し、大地を抉りながらどこまでも突き進む。


 そしてグルゥは右手一本で巨漢を持ち上げると、その体を馬車の荷車に叩きつけ、荷車を粉々に粉砕した。

 あまりの衝撃に、驚いた馬が慌てて走り出し逃げ去っていく。


 残された最後の若者に、逃げる術はもう残されていなかった。

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