24.復讐とおっさん―4
「いよいよ真打のお出ましってわけか。待ちくたびれたぜ」
サグレスタワーの屋上に、冷たい夜風が吹く。
荒れ狂うように吹き始めたその風に立ち向かうように、グルゥは屋上に、力強い一歩を踏みしめた。
「……いい加減、諦めろ。こうなった以上、お前に勝ち目は無い」
『憤怒』に燃えるグルゥは、既に体の半分が魔獣化を遂げていた。
まだ自制心は利いているが、これ以上火に油を注げば、本気でアキトを殺しにかかるだろう。
「はァ? 勝ち目は無いって、それはどっちのセリフだよ。さっきまでの仲間はどうした? 一緒に上ってきたみたいだが、いなくなってるじゃねぇか。どっかに振り落としてきちまったんじゃねぇのか?」
アキトの指摘に、グルゥは何も答えなかった。
答える必要は無いと、心の内ではっきりと決めていた。
「一対一なら、圧倒的に俺の方に分があるだろ。それにこっちには、この人質もいる。余計な御託はいいからさ、さっさと始めようぜ?」
「……何をだ」
「“決闘”だよ。前回、マリモ先輩がお前を撃ったとはいえ、俺の中じゃあ、お前には負けたままなんだ。勇者が魔王に負けるなんて、ありえねーだろ? だからこれはリベンジマッチだ。俺が、お前に果たす復讐なんだよ」
復讐という言葉を聞いて、グルゥはぎゅっと唇を噛み締めた。
どの口が言う。
復讐としてお前を殺してやりたいのは、こっちの方だ。
――だが、グルゥの中で取るべき行動は、既に決まっていた。
「戦う必要は、ない」




