24.復讐とおっさん―2
指定した時刻までは既に十分を切っていた。
サグレスタワーは二十階建ての高層ビルだ。
アルゴ公に指示して、各階に警備の人間やトラップを仕掛けさせたため、その攻略には少なく見積もっても一時間以上はかかるはずだった。
それなのに、グルゥがサグレスタワーに侵入を開始したという情報は、未だにアキトの耳に入って来ない。
「最悪だな、恐れをなして逃げちまうとは……面倒くせェ、さっさと殺しちまうか? なァ、どう思う?」
アキトに聞かれたキットは、薄く目を開けてチラリと見やる。
だがアキトの言葉に対しては、何も答えようとはしなかった。
「ケッ、相変わらずのシカトかよ。つってもこれじゃあ、何の盛り上がりも無いままだしな。どうだ? 十分を切ったし、一分ごとに指の一本でも斬り落としてみるか? あーでもそれなら、足も含めれば二十分前から遊べたな。失敗したぜー」
そう言って、アキトは横目でキットの様子を窺う。
キットは何も答えなかったものの、尻尾の毛が逆立ち、怒りや恐怖を感じていることが見て取れた。
「バーカ。ガキのクセに、いきがるからだよ」
そう言ってアキトは、剣を抜いてキットに迫っていく。
今、言葉にした残酷な行いを、行動に移すためだった。
「……負けない」
「あ?」
「何をされても、オレは、お前には絶対に屈服しない」
目を見開くキット。
燃えるような目つきに射抜かれて、アキトは舌なめずりをした。
「いいねェ……そういう態度を取られちまうと、俺もついつい興奮して……殺っちまうんだ」
アキトの手がキットの体に触れようとした――その時だった。




