23.タイムリミットとおっさん―11
「サリエラ……あと、ミノン、も」
「ごめんなさい、お父様。こちらも刺客の襲撃に遭っていて、遅くなりました」
言われてみれば、やって来たサリエラとミノンは全身煤だらけで、何か大きな爆発に巻き込まれたことを物語っていた。
「へぇ、いつの間に仲間を増やしてたんだ、おっさん? しかもガキばっかでさぁ、そっち系の趣味あるんじゃないの」
「お父様への侮辱はやめなさい。まあ、やめなくても、私が今ここであなたを成敗しますけど」
普段の優しい姿とは違い、敵を前にしたサリエラの目はいつになく鋭いものだった。
怜悧な言葉遣いに、ミノンも少し怖かったのか、一歩下がって様子を見ている。
「成敗ねぇ。まるで俺の方が悪者みたいな言い方だけど、俺は勇者だぜ? そしてそっちは、公国の重要施設を破壊した魔王の一味だ。どっちが正義なのか、考えなくても分かると思うけど?」
「そうですね、その点に関しては私が間違っていました。訂正させてください」
丁寧な口調で、サリエラはそう申し出た。
「私が今ここで、あなたを断罪します。一目で分かりましたよ、あなたはどうしようもない悪なのだと。腐ったクズの目です、お父様の澄んだ目とはまるで違う」
「全然……訂正になってないんだけど?」
ビキビキとこめかみに血管を浮き立たせるアキト。
一触即発の空気を感じ、グルゥは何とか加勢できないか、もう一度立ち上がろうとしてみる。
だが、全身に回った毒によって痺れが発生し、今のグルゥは体の動かし方も分からなくなっていた。
「まあ、そういうことなら……俺にも策があるんだよね」
ニヤケ面のアキトはそう言うと、気を失ったままのキットを抱え上げた。




