23.タイムリミットとおっさん―10
あーあー、なんだよ。せっかく来たのにもう終わってんじゃん。
つか、みんな死んでんのかコレ?
ひっでーな、先生なんて全身ぐちゃぐちゃだ。
おっさんももうぶっ倒れてるし……ん? なんだこのガキ? 魔人の子供だったのか。
コイツを捕まえてけばまたポイントが貰えるじゃん。
やべー、俺、最高にツイてる――
「キットに……触れるな……ッ!!」
アキトの呟きを聞いて、沈みかけていたグルゥの意識が覚醒した。
おおっと、グルゥを見つけたアキトは嬉しそうに笑う。
「なんだよおっさん、生きてたのかよ! もう先生に殺されちまったのかと思って、どうしようかと考えてたぜ。それじゃ、俺の手柄が奪われちまうからな」
ヘラヘラと笑いながら、グルゥの方へ近付いていくアキト。
先生、というのはケンロウのことだろう。
アキトは腰の剣を抜くと、躊躇することなくグルゥに突きつけた。
「んじゃま、そういうことで」
何の逡巡もなく、まるで害虫を潰すかのように、アキトはグルゥに斬りかかる。
その屈託の無い笑顔に、グルゥは寒々とした思いを抱いたが――
「っと!」
アキトはとっさに剣を止めると、大きく後ろに跳んだ。
アキトが居た場所に、無数の氷の矢が降り注ぐ。
「お父様に手を出すことは……許しません」
現れたのはサリエラだ。
人差し指と中指に魔力を蓄えたサリエラは、次なる氷の刃を撃つため、その指でアキトを差していた。




