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23.タイムリミットとおっさん―9

 全身に毒が回り、動けないはずだったグルゥ。

 予想外の動きに、ケンロウは驚いて足を振り、グルゥの手を振り払おうとした。


 だが、その手にはしっかりと力が込められており、離す気配は全くない。


「おい……離せってんだよ!? いいか? さっきの解毒剤に即効性はない、お前に動かれると面倒だからだ。勘違いして張り切ってと、マジで死んじまうぞ!?」


「だから……なんだというのだ」


 グルゥの腕の筋肉が隆起し、足首を握る手にさらに力が入った。

 ミシミシと骨が軋むような音がして、ケンロウはぎゃっと悲鳴をあげる。


「おいおいマジか……マジなのか? 冗談抜きで、これ以上動こうとするとお前は死ぬんだぞ!? 自分の命くらい、大切にしろって!!」


「帰る場所の無い私の命に……守るような大層な価値はない」


 滝のような脂汗を流しながら、片膝をついて、体を起こそうとするグルゥ。


「あるとすれば、娘達を守り、その居場所となること、それだけだ。その娘が奪われようとしている時に――」


 ついに立ち上がったグルゥは、ケンロウの足首を掴んだまま、その体を逆さまに持ち上げた。

 ケンロウは顔面蒼白となり、咥えていた煙草をポロッと口から落とす。


「命を賭けない親父が何処にいるッ!! 貴様は、私を怒らせた……ッ!!」


 大きく振り被ったグルゥは、まるでボールでも投げるように、ケンロウの体を力任せにぶん投げた。

 大の大人が紙細工のように吹き飛んでいき、裏路地の塀にぶち当たって吐血する。


「がはッ……! ……お、俺は、忠告、したから、な…………」


 ひしゃげたケンロウは、そう言い残し、そのまま気を失っていった。


 ――キットを、娘を守ることが出来た――


 その達成感に浸るグルゥは、満足げな笑みを浮かべると――夥しい量の血を吐いて、自らその血溜まりの中に昏倒していった。

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