23.タイムリミットとおっさん―3
「す、すみません! 今、ちょっと調子が悪いみたいで――」
「いや、いいさ。俺は旅人でね。これくらい派手な方が、ここまで来た甲斐があるってもんだ」
そう言って、男はコートのポケットに両手を突っ込んだまま、狂ったように喚くモニターを楽しそうに眺め出す。
(なんですか、この人は)
変わった人間もいるものだと、サリエラは怪訝そうな目つきで男の様子を観察した。
男は見た目は若く、二十代半ばくらい見える。
背中まである長髪が印象的で、その色はワインのような深い赤だ。
また、その中には多少の黒髪も混じっており、どこか変わった印象のある男だった。
「んー……それじゃあ俺、コレを貰おうかな」
「は、はい? お買い上げですか? しかし故郷に持ち帰られても、サグレスの中でないと映像は受信できませんよ?」
「ちーがーう。俺が欲しいのはコレ、コレだよ」
そう言って男が指差したのは――点滅を繰り返すモニターに夢中になっている、ミノンだった。
「は……?」
「頂いてくぜ」
ミノンの背中に手を伸ばす男。
突然のことに反応が遅れ、サリエラは男を止めることが出来なかった。
「え――」
振り返ったミノンの純真な目に、迫り来る男の目が映る。
次の瞬間、ウィンドウ内のモニターが次々と爆発し、店員や通行人までもがその衝撃に吹き飛ばされていった。




