23.タイムリミットとおっさん―1
グルゥたちと同じく、深くフードを被ってサグレスの街を進む、怪しげな人影が二つ。
「わー、空飛ぶ船だー! すごいねーサリエラー」
「ちょっ、そんな悠長に観光している暇はないですよっ! 早く、お父様との合流地点まで行かないと」
格好の割には緊張感の無い、サリエラとミノンのコンビだった。
ミノンは空に浮かんでいるバルーン船に気を取られ、ふらふらと人混みの中に向かってしまう。
「だーめーでーすーよー!!」
そんなミノンの首根っこを掴み、強引に道の端に戻すサリエラ。
まるで子猫を運ぶような二人のやり取りを、通りがかりの人たちは微笑ましそうに見ていた。
「なんでお空に船が浮かんでいるのかなぁ?」
「さ、さぁ……。ただ一つ確かなのは、今気にするようなことではないということです。さあ、行きますよ」
そう言ってサリエラは先に進もうとしたが、
「あれは、空撮用の船なんですよ」
店先に立っていた親切な店員が、ミノンの疑問に答えていた。
それを聞いて、ミノンの目が好奇心でいっぱいになった。
「くうさつ? ってなに!」
「空からサグレスの街並みを撮影する、撮影用の船です」
「すごい! どこまで行けるの?」
「今はまだ、サグレスの上空を漂うくらいしか出来ないそうです。ゆくゆくは他の国にひとっ飛び出来るような船を作りたいと、アルゴ公は仰られていました」
好き勝手に店員との会話を始めたミノンに、サリエラは深く頭を抱えた。




