22.親父とおっさん―9
ケンロウは再び仕込み針を投げつける。
目、喉、心臓と、その一本一本が正確に急所を狙い済ましたものだった。
しかし、グルゥは再び針を払い落とす。
狙いが正確な分、それを防ぐのは用意である。
「親父っ、オレも加勢するっ!!」
「お前は下がっていろ!! ……何か妙だ、この男」
一定の間合いを取り、遠距離から針の攻撃を繰り返すケンロウ。
確かにその技は長年の鍛錬の賜物なのだろうが、いまいち迫力のない攻撃に、グルゥは不気味さを感じでいた。
(それにこの男……だんだんと動きのキレが増している。これだけ、こちらの攻撃を避けるための運動を行っているのに、だ)
このまま、こちらのスタミナ切れを狙う作戦だろうか。
一度足を止めたグルゥは、じっくりとケンロウの出方を窺うことにした。
だがそうすると、ケンロウも戦いの手を止め、鼻歌混じりにグルゥの様子を見始める。
「はぁ、はぁ……貴様、何を考えている」
「いやぁ、おっさんもその年で大変だなって。年を取ってくると、お互いに動きの鈍さってのが分かっちまうモンだろう? ここまでご苦労様でした、もう休んだ方が身のためだぜ」
「ふざ……けるな!! ……はぁ、私は、貴様のように、負けるわけには……はぁ……」
声を出そうとして、それすらも体の負担になっていることに、グルゥは気が付いた。
ケンロウの言う通り、本当に年に勝てなくなってきたのだろうか?
いや、それにしたって異常だ、ここに来るまでの長い道のりも、健脚でやって来れたというのに。
「まさ……か……っ!?」
息が苦しくなって、グルゥはその場に膝をついた。




