3.賊・孤児とおっさん―6
異様な雰囲気を纏って立ち上がったグルゥに、若者は甲高い耳障りな声で喚き散らした。
「や、やめろ……来るんじゃねェよ!! このガキ共が、どうなってもいいってのかよッ!!」
この期に及んで、幼い命を盾にするような行為。
ドクン!!
心臓の鼓動が、いっそう激しくなるのを感じる。
「頭が……痛むんだ。これ以上、私を怒らせない方がいい。……頼むから、もう全てを捨てて、この場所から逃げ出してくれないか」
グルゥの心からのお願いだった。
だが、その言葉は一切聞き入れられることはない。
「ふざけんなッ!! ここから去るのはテメェの方だ!! 今すぐここからいなくなれよ、そうすれば、テメェの命を取ることもねェ!!」
「そう、したら……その子供たちは、どうなる?」
「はァ!? そんなこと、なんでテメェが心配してんだよ……。コイツらはみんな俺らの持ち物だ、口出しされる覚えはねェ!!」
ドクン!!
ドクン!!
ドクン!! ドクン!! ドクン!!
もはや……怒りの限界だった。
これ以上、怒りを抑えることが出来ない。
だが、その怒りに身を任せてしまえば、きっと――
「もう、いいだろう!? オレたちを助けてくれよ、頼みを聞いてくれるって言ったじゃんかよ、おっさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」
その、キットの涙混じりの叫び声が、引き金だった。




