22.親父とおっさん―3
「あれがアルゴ公か」
それは、刺客として襲撃してきた男から聞いていた情報だった。
『公爵に手っ取り早く話をつけるんだったら、行きつけの店から出て来たところを直撃するのが早いぜ。一応、体裁もあるから護衛も最低限しかつけていないはずだ。何の店かって? …………女だよ』
公務を終え、夜の帳が下りるやいなや、自身の欲望を満たすために活動を開始する公爵。
本当に最低な男だと、グルゥは怒りでグッと拳を握り締めた。
「そうだね、間違いないよ親父」
「あの脂ぎっててかった頭は、待ち構えている間にモニターで散々見た。いくらマスクをしていても、間違えようがないだろう」
しかし、こうもスムーズに会えるものかと、グルゥは自身の幸運に懐疑心すら抱いていた。
「どうする親父? 今ならまだ、護衛もついてないみたいだぜ。すぐに行けばやれるかもしれない」
「そうだな……躊躇している暇はないか」
すっきりとした顔で、ふらふらと歓楽街を歩くアルゴ公。
この辺りではすっかり顔馴染みのようで、周囲の少女に手を振り返している。
その目の前に、グルゥは大きな図体を生かして立ちはだかった。
「話があります」
まさかの直球の申し出。
アルゴ公はポカンとした表情でグルゥを見上げていたが、やがて何かに思い当たったのか、わなわなと唇を震わせ、踵を返して逃げ出そうとした。




