EX3 もふもふとおっさん
「あ、ちょうちょー」
「こらーミノン! 勝手にどこに行くんですかー!」
サグレスへ向かう道中、未だ能天気なミノンを追いかけ、サリエラが走っていった。
二人きりになるグルゥとキット。
グルゥの我慢は、限界を超えようとしていた。
「な、なぁキット」
「なんだよ、そんな息を荒くして」
「その、一度でいいから……存分にお前を触ってみたかったんだ!!」
そう言ってキットに飛び掛かったグルゥは――キャップから飛び出た獣耳と、同じくズボンの穴から出している尻尾を、鷲掴みにして感触を味わう。
「ひゃあああああああ!? な、何すんだ親父!?」
「す、すまない。こう見えて、犬とか猫とか、子供の頃から大好きだったんだ。それなのにずっと触れないなんて……まさに餌をお預けにされた犬の如き所業っ!!」
「ま、待ってくれよ!! 別に親父になら触らせてやってもいいけど、生えたばかりで、まだ敏感なんだここ、ふわぁっ!?」
キットの制止も聞かず、ずっともふもふ欲を我慢していたグルゥは、堰を切ったようにキットの獣耳と尻尾をもふり続けた。
「あ、ああ……やはり良いものだな、毛並みの生え揃ったケモノというのは!!」
「く、くすぐったいよ親父……ああんっ!」
体をくねらせ身を捩るキットを、グルゥはがっちり押さえてホールドする。
その声が怪しげな音色に変わってきた時だった。
「ちょうちょ逃げられたー……」
「またいつでも捕まえられますよ。今度一緒に探しに行きましょ――あ」
戻ってきたサリエラは、グルゥがキットを揉みしだいている姿を見て、硬直した。
「もふもふも……あぁっ!? い、いや違うんだサリエラ!! これはその、なんというか、我慢の限界で――」
「ド変態がッ!!」
全く言い訳になっていない言い訳をしたグルゥに、いつもの平手打ちが景気良く炸裂する。
これ以降、グルゥにはサリエラより、もふもふ禁止令が下されたのだった。




