21.お父様とおっさん―11
「ふるーさとーおもーえばー」
夢を見ていた。
幸せだった頃の夢。
まだ、ムジカも健在で、ノニムと三人で川の字になって寝ていた時のこと。
「こいーしそらーみあーげるー」
揺蕩うようなムジカの子守唄に、ノニムだけでなく、グルゥも聞き惚れる。
既にノニムはすやすやと健やかな寝息を立てていて、それはグルゥのためのコンサートだった。
「かえーるべーきばーしょにーかわらぬともしびー」
帰るべき場所……いったい今の自分の帰るべき場所は、どこなのだろうか。
城を、国を捨てたグルゥには、もう帰るべき場所などない。
例えノニムを救い出したところで――自分は何処に行けばいいのか――
「…………馬鹿だな」
眠りから覚めたグルゥは、自分の胸にある温もりに、そんな心配など杞憂であると感じた。
夜営に際して、刺客の襲撃を恐れたグルゥは、大木にもたれかかり、自分の腕の中に三人を抱えて眠っていたのだ。
昼間、あれだけ言い争っていたキットとサリエラも、こうしていると仲の良い姉妹のようである。
見上げた空は『イルスフィア』に居た頃と同じ満天の輝きで、求められる間は、自分が三人の居場所になろうと、グルゥは強く決意するのだった。




