21.お父様とおっさん―10
「なぁ、最新の符丁は分かってるか?」
「……はぁ? 俺はスラムの人間だ。“抜け道”を使うために、当然分かってるに決まってるだろ。……って、まさか――」
驚いたように顔をあげた男に対して、キットは大きく頷いた。
「分かったろ? 親父。オレなら、サグレスに入る抜け道の使い方を知っている。そして、サグレスの内部に詳しいのもこの中ではオレだけだ」
「ま、待て待て待て! まさかお前達……サグレスに入り込もうというのか!? 手配までされているのに!?」
「だけど、お前が言ったじゃんか。“顔はまだ知られていない”んだろ? 逆に言えば、今を逃せば、もうこのチャンスはやって来ないかもしれない」
キットはサグレスに乗り込むつもりのようだが――サリエラはどうする? ミノンは?
二人のことを思うと、グルゥはすぐに答えを出せないでいた。
いっそ二人とは別れ、もう一度キットとの二人旅に戻って、サグレスに向かうべきではないかと。
「何の話かは知りませんが。この期に及んで、私を仲間外れにするのはやめてくださいね?」
いつから話を聞いていたのか、サリエラもミノンの手を引いて部屋まで戻ってきた。
「そもそも、トリカゴで騒ぎを起こしたのはお父様も私も同じですから。ここで突き放す方が、よほど危険で酷いことじゃないですか?」
「うっ……それもそうだな。ミノンはともかく、サリエラは思い切り私と共に居るところを見られている」
そこまで話したところで、グルゥは意を決し、力強く立ち上がった。
「私から、改めて頼んでいいか。サグレスに向かい、アルゴ公から直接話を聞く機会を作る。その、手伝いを」
力強く頷く、三人の子供たち。
グルゥの決定に異を唱える者は、誰もいなかった。




