21.お父様とおっさん―9
「それで公爵からは、異世界勇者にも依頼をするつもりだから、現場で会ったら協力するようにと言われていたんだ。現状では、俺が一番早くここまで辿り着いたようだが」
「待ってくれ、まさかとは思うが……アルゴ公は、異世界勇者と繋がっているのか!?」
グルゥの問いに対して、男はあっさりと頷いた。
「繋がってるも何も……スポンサーみたいなものだよ、公爵は。異世界勇者に依頼をこなしてもらう代わりに、こっちからも資金の援助などを行ってるんだ。ある程度公爵に近い人間なら、誰でも知っている事実だ」
(ということは、捕まえた魔人についても何か知っているかもしれない)
ようやく見つけた、愛娘へ辿り着くための手がかり。
グルゥはいてもたっても居られずに――男の体を、ぎゅっと抱き締めた。
「んなッ!? な、なんだぁ!?」
「よく……その事実を教えてくれた。先程までの非礼を詫びる……君は十分に、勇敢な人間だった」
グルゥに褒められて、男は少しだけ、そのことを誇るように笑顔を浮かべた。
するとそこで、部屋のドアを乱暴に開けてキットが入ってくる。
「ごめん、親父。話は全部聞かせてもらった……っていうか、外に居ても聞こえちまうんだ、この耳」
そう言って、キャップに空けた穴から出している獣耳を、ヒクヒクと動かすキット。
「サグレスへ向かいたいんだろ?」
「いや、だが……お前達を、巻き込むわけには――」
躊躇する様子を見せるグルゥに、キットは大きくため息をついた。




