21.お父様とおっさん―1
その夜のこと。
日が沈む前になってようやく見つけた小さな町の宿にて、グルゥは一人休んでいた。
「うーむ……」
寝付こうと思ってもなかなか寝付けない。
それは町の食堂にて、気のいいおばちゃんから聞かされた話が原因だった。
『トリカゴをぶっ壊した犯人にね! 懸賞金が懸けられているらしいわよ! あたしゃあ、その魔人さんにお金をやりたいくらいだけどね!』
キットを救うため、その後のことを考えていなかったが、公国の運営に関わるような重要な施設を機能停止にまで追いやったのだ。
当然、アルゴ公国は自分のことを狙ってくるだろう。
三人の子供たちを守るためには、その危険から彼女らをなるべく遠ざけなくてはならない。
だが、それはノニムを助けにきたグルゥにとっては、自ら手がかりから離れていくことと同義だった。
(なんとかして、あの異世界勇者から目的を聞き出さねば)
最悪、どこに連れて行かれたのかさえ分かれば、後は自分一人で動いて子供たちを安全な場所に行かせることが出来る。
しかし問題は、あのアキトとかいう異世界勇者からは、まともな回答が期待出来ないということだ。
(もう一人の少女……マリモとか言ったな)
グルゥは自分を射抜いた少女の顔を思い返す。
厚い唇と、後ろで縛った茶色い髪が印象的だった少女。
その表情には、アキトとは違い苦悩の色が浮かんでいるようにも見えた。
(話を聞くなら、あちらの少女の方だな……)




