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3.賊・孤児とおっさん―4

「テメェコラ、勝手なことを言ってんじゃねぇ!!」


「逃げてよ、キット兄ちゃん!! キット兄ちゃんは、さっきもそうだし、いつも、ぼくらの身代わりになって、ぼくらを守ってくれたじゃないか! だから、今度はぼくらがキット兄ちゃんを守る番だ!!」


 荷車の中から、まだ動ける三人の子供が、キットを守るために飛び出してきた。


「この、このっ!」


 若者にしがみついて、何とか足止めをしようとする子供たち。

 キットは、その光景を呆然としたまま眺めている。


「い、いいんだよお前ら……なんで、オレなんかのために……っ!」


「チョロチョロするんじゃねぇよ、テメェら!! こうなったら、お仕置きを通り越して、ブッコロだ!!」


 完全に頭に血が上った若者は、ついに剣を抜き、子供たちにその刃の先を向けた。

 あわや、その剣先が子供の命を奪おうとする、まさにその時だった。


「やめろッ!!」


 ダガーを抜き放ったキットが、目にも留まらぬ俊敏な動きで、若者に後ろから斬りかかる。

 その刃は若者の背中を浅く斬り裂き、痛みに若者は悲鳴をあげた。


「キット、テメェ!! 自分が何をやってるのか、分かってんのかッ!!」


「分かってるよ……オレはもう、お前らの言いなりになることも、ここから逃げることもしない」


 そう言って、ダガーを構えたキットは、仰向けに倒れたグルゥを庇うように立ちはだかった。

 捻挫をした手首はテーピングで固定しただけであるため、ダガーを持つだけでも痛みがはしったが、その痛みを表情に出すことは決してない。


 奴隷ではなく、一人の人間として意思を持ったキットの目からは卑屈な翳りは消え失せ、誇り高き戦士のように強い光を湛えていた。


「オレは守る……みんなを守る!! おっさんも、仲間たちも。そのためだったら、いくらでもこのダガーを振るってやるッ!!」

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