20.パパとおっさん―2
「知らなかったんですの!! ゲーロゲーロが、氷属性の魔法に耐性を持っているなんて……!!」
唾液を洗い流すため、ようやく見つけた川辺にて。
意識を取り戻したサリエラは、肩をいからせながらそう熱弁するのだった。
「えー? 蛙の見た目なんだから、それくらいなんとなく想像がつくと思うけどなー」
「うるっさい! ケモ娘は黙っていてください、魔法のことなんて分からないくせに!」
「な、なんだとー!? だいたいオレが行ってれば、たぶん弱点の雷攻撃であっという間に勝ってたんだ!! っていうかなんだよあの魔法、そもそもが大した威力じゃなかったじゃん!!」
「きょ、今日は何故だか調子が悪かっただけです!! 確かにツララ程度しか出せませんでしたが、本来の実力であればあんな蛙八つ裂きに出来ていたのですっ!!」
また騒々しい言い争いが始まったと、グルゥはここ数日で十回以上は見た展開にぐったりしてしまう。
キットとサリエラの仲の悪さは、想像以上のものだった。
野生児と温室育ち。
がさつと丁寧。
盗賊と魔法使い。
バカとアホ。
最後のは置いておいて、とにかく水と油のような二人の性格は、何をするにも正反対の行動を取ってしまう。
そんな中で、唯一グルゥの心のオアシスになっているものがあった。
「パパ、一緒に、一緒に水浴びしよう?」
他の二人と喧嘩をすることもなく、常に穏やか、かつふわふわとしていて、見ているだけで和むような存在。
それがミノンで、グルゥはすっかり、ある意味ミノンの虜になってしまったのである。




