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20.パパとおっさん―1

 太陽の光がぽかぽかと降り注ぐ、のどかな野道。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああッ!!」


 その牧歌的な雰囲気を一瞬でブチ壊す、サリエラの絶叫が響き渡っていた。


「な、なんですかこのモンスターはっ!? 強い、強すぎますっ!!」


 二足歩行の大きな蛙型モンスター『ゲーロゲーロ』。

 その長い舌に巻き取られたサリエラは、身動きすることも出来ず、ただ蠢く舌に嬲られるだけである。


「ああッ!! いやぁッ!! く、苦しい……っていうか臭い、ぬめぬめする……嫌、嫌……あれ……嫌、じゃなくなってきた……?」


「はいストーップっ!!」


 何故かサリエラの声が艶やかになってきたところで、慌てて飛び込んだグルゥの鉄拳が、ゲーロゲーロを吹き飛ばした。

 長い舌から解放されたサリエラは、顔を真っ赤にしながら、唾液でべとべとになった自身の体を見つめていた。


「ふ……ふふ……ぬるぬるのべちょべちょです……ねぇお父様、お父様もこっちに来て、一緒にぬるぬるのべちょべちょになりませんか……?」


「正気に戻れ!!」


 サリエラの首筋に、鋭い手刀を一発決めるグルゥ。

 きゅう、と寝込んだサリエラを、仕方なくグルゥは両手で抱えあげる。


「う……確かにぬるぬるのべちゃべちゃで、しかも臭いな……」


「なんだよ、サリエラのねーちゃん、ここは私に任せろ、とか言ってめちゃめちゃ弱いじゃんか」


 あくびをしながら、気絶したサリエラの顔を覗き込むキット。

 その尻尾は、好奇心からびゅんびゅんと左右に揺れていた。

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