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###謁見にて###―3

「殺……し……? うそ、ついに私たち、殺しを依頼されたの……!?」


「今さらそれくらいでビビんなよ。俺にとってはもう日常茶飯事だっつーの。お前らは良いよな、レベルアップなんて概念がないから、“殺し”をしなくて済むんだ。俺も初めから完成されたチートスキルを持ってりゃ、もっと楽に“殺し”が出来たのに」


 アキトの目の奥に垣間見える邪悪な光。

 それは既に、殺しを快楽の一部と見なしているような、危険な光だった。


 無意識の内に、マリモはアキトに対して距離を取っていた。


「まあいいさ。あのおっさんは俺が殺る。前回、ボコボコにされた恨みがあるからな」


「殺る、って……。また、返り討ちにあったらどうするの? きっとあのおじさん、本当は強いんだよ。いくら公爵の依頼だからって、そう安請け合いしない方が――」


 マリモの話の途中だったが、それがアキトの怒りに触れたのだろう。

 テーブルの上の花瓶を力任せに殴り飛ばし、ガシャンと鳴った大きな音に、マリモは脅えて体をすくめる。


「誰が、返り討ちにあうって、先輩? ……俺は勇者なんだ、魔王に負けたままじゃ、話にならねーだろ」


「……でも、私はアキトのことを心配して」


「それが余計だっつってんだよ。大丈夫だ、アイツは弱い。それはとっくに分かってることなんだ」


 断定するような口調のアキトに、マリモは不思議そうな表情を浮かべた。

 それに気付いたアキトは、チッチッと指を振ってマリモに答える。


「良いことを教えてやる。あのおっさんの角はな、俺が折ったんだ」


「……そう、だったの?」


「だが、それは右の角だけ。見ないうちにもう一本も折られてるんだから、やっぱりアイツ、大して強くねーんだよ」


 それだけで判断するのは楽観的すぎるとマリモは思ったが――今のアキトには、何を言っても無駄だということは分かっていた。


(もしも。もしもアキトとあのおじさん、どちらか死ぬことを避けられない戦いなのだとしたら)


 まるで祈るように、マリモはぎゅっと両手を合わせ握り締めていた。

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