###謁見にて###―2
「で、どうだったの?」
「相変わらず臭かったぜ」
「臭……って、そうじゃなくて! 今回の子について!」
身も蓋もない言い方をされ、閉口するマリモ。
ダストンの下より戻ったアキトは、宿の一室にて、マリモに今回の獲得ポイントを伝えていた。
「え、そんなに!? ……あの子、それほどの『血統』の力を持ってたんだ」
「王国にとっては、良い材料になるだろうな。……んで、ユズはどうしたんだよ?」
「また奥の部屋でゲームしてる。良いところだから話しかけないで、って。ねぇ、アキトからも何か言ってよ」
ほっとけ、とアキトはマリモの頼みを一蹴した。
「それともう一つ。お前にとっては良い話だが、俺にとっては悪い話があるぜ」
意味深なアキトの言い回しに、マリモは眉間に皺を寄せた。
「どういうこと?」
「トリカゴが何者かの襲撃を受け、陥落したらしい。いや、陥落という言い方はヘンだな。施設自体はそのままだが、中の人間が全員倒され、せっかく確保した労働者が全員逃げ出したらしいんだ」
「な、何それ。アクション映画みたいな話ね」
困惑するマリモに、アキトは不愉快そうに顔をしかめながら、続きを話した。
「その事件には、角が折れた魔人が関与していたそうだ」
険しいマリモの表情が、一瞬固まった後、ぱぁっと明るくなった。
「うそっ! あのおじさん、生きてたんだ!? 良かった、私、人殺しにならなくて良かったんだ……!」
「全然、良くねぇよ。公爵に、その魔人を殺すよう、直々に頼まれた」
明るくなった表情が、再び、絶望のドン底のような暗いものに変わる。




