19.大脱走とおっさん―10
トリカゴから出発する無数の船たち。
監視官がいなくなった今、囚われていた労働者達を止めるものは何も無く、全員が無心で脱走を試みていた。
まさに大脱走。
グルゥたちもその内の一隻に乗って、夜の海へと航海を始める。
「それにしても……よく、これだけの船が用意されていたな。いったい何に使うつもりだったんだ?」
一部ぎゅうぎゅうの船もあったが、まさか労働者全員が脱出出来るとは思っていなかったので、グルゥは不思議そうに首を傾げていた。
「それだけ多くの人間が、最近トリカゴに来たってことですかね?」
サリエラの推測は惜しいところまでいったものの、その真相にまで気付くことはなかった。
一方で、キットは夜の海を眺めながら黄昏ている。
「どうしたんだ。せっかくこうして会えたのに、そんなに落ち込んで」
「そりゃ、落ち込むだろ……。せっかく、仲良くなれたと思ったんだ、ミルププ」
そういえばそうだ、とグルゥはキットが落ち込んでいる原因を理解した。
だが、そのことについてなんと話せばいいか――グルゥが悩んでいると、唐突にサリエラの悲鳴が聞こえた。
「何があった?」
「そ、そこです、この船に積まれていた木箱が、急に動き出して……!」
確かにコンテナのような木箱が、ガタガタと独りでに動き出している。
グルゥは恐る恐る近付いて、その中身を確かめようとしたが。




