19.大脱走とおっさん―8
「大丈夫か、サリエラ」
「う……お父……様……?」
気絶していたサリエラを、グルゥは優しく抱えて起こす。
多少の怪我はしているものの、命に別状はないようだ。
「良かった……勝ったのですね、私たち……!!」
ビルブーが尻から棒を生やしているのを見て、何となくその事実を理解したサリエラは、グルゥの厚い胸板に飛び込んだ。
「お、おいっ、こんなところで……」
「だって、本当に心配したんですものっ! お父様が、やられた、って……?」
サリエラの視線はグルゥの肩越しに、腕組みをしている少女に移った。
獣耳と尻尾が生えた変わった少女だったが、何故かもの凄く不機嫌そうな顔をしている。
「親父ぃ……“お父様”、ってどういうこと?」
「い、いやその、これは」
「オレが酷い目に遭ってる間に、いったい何をしてたんだよっ!?」
何故、自分が責められなければならないのか、イマイチ理解していないグルゥだった。
サリエラはキットに向かってべーっと舌を出し、あくまでグルゥを離さない所存である。
「だから、そういうのはここから脱出してからにしろって――」
言ってる側から、フォルドームに雪崩れ込んでくる大勢の監視官と警備兵たち。
「いたぞ、脱走者だ! 捕まえろっ!」
「ビルブー様までやられている! 相手は手練れかもしれん!」
その数は、十、二十と……総勢で百を超えるほどの人数が、次から次へと入ってくる。
「なんだこの人数は!?」




