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19.大脱走とおっさん―7

「な、なんだこれはッ!? うるさいッ!? 誰か、止めてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


「それじゃあ、お言葉に甘えて……止めさせてもらおうかッ!!」


 走り出したグルゥ。

 それに合わせてキットも動き出していた。


 無我夢中で暴れまわるビルブーに、まずはキットが電撃の手刀をお見舞いする。

 痺れて動けなくなったところで、グルゥはその鼻っ柱に狙いを定めた。


「お前が傷つけた人の痛みは、この程度では収まらない。だが、その一辺でも、この怒りの拳によって思い知るがいいッ!!」


 グルゥの背筋、そして二の腕の筋肉が激しく隆起する。

 渾身の鉄拳は、ビルブーの豚っ鼻に真正面から炸裂した。


 五メートル以上はある巨体が、まるで紙風船のように勢いよく飛んでいく。


「ブヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」


 岩肌に激突するビルブー。

 そのあまりの衝撃で、まるでその一部がクレーターのように丸くへこんだ。


 が、それだけでは衝撃は収まらなかったらしい。


 それ以上、固い岩肌では衝撃を受け止め切れなかったのだろう。

 ワンテンポ遅れて、ビルブーの巨体がめりめりと潰れ始め、ぺちゃんこになってその場で弾けた。


「あが……が…………が…………」


 魔獣化が解けたビルブーは、全身の骨という骨が砕けていて、歯も全て粉々になって無くなっていた。

 全裸になって、ぷりんと尻を突き出して気絶したビルブーに、キットは細く割れたフォルの破片を持って近寄る。


「勝利のフラッグ、イェー!」


 ビルブーの尻にフォルをぶっ刺すキット。

 それはさすがに良くないと、グルゥは自分のお尻を押さえながら左右に首を振った。

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