3.賊・孤児とおっさん―2
「じ、事務職……それも経理って!!」
「こいつぁお笑い草だな!! そんなヤロウが、俺たちを倒そうとしていたのかよ!!」
笑いが止まらない様子の若者達を、グルゥは腕の隙間からチラリと見やる。
「倒そうとなんてしてないさ。私は初めから君たちに、もうこんな馬鹿な行いは止めろと話したかった、それだけだ。虚しいと思わないのか? 自分より弱いものを暴力で支配し、暴力を振るわせ、その憎しみは永遠にループする」
「はぁ……? 知った風な口聞いてんじゃねぇよ!!」
若者の蹴りが、グルゥの腹を思い切り蹴飛ばした。
ぐっ、とグルゥは衝撃に身を丸くする。
蹴られた痛みは大したことないのだが、背中に付けられた傷に響いて痛かった。
「俺らだってなぁ……お館様の指示でこうして動いてんだ。ここから逃げ出そうとすれば、次に地獄に落ちるのは俺たちの方だ。だから俺たちは、その現実を身を持ってチビたちに教えてやってんだよッ!!」
「だからといって……それは、暴力を繰り返していい理由にはならない!!」
「るせェ!! おい、デブ……いつものアレ、やっちまえ!! もうこんなヤツ、生かしておく必要はねぇ!!」
若者からの指示を受け、巨漢は、のそのそと歩いてグルゥの胴体の横で立ち止まる。
二人の若者は、それぞれグルゥの肩と、太ももの辺りを足蹴にし、動けないように地面の上に固定した。
「ま、まさか……やめろ、そんなこと――」
「後悔したってもう遅ェよ!! オラ行けデブ、ハードスタンプだッ!!」
さすがのグルゥも、今から自分の身に降りかかることを想像し青ざめた。
ぴょいんと、まったく高さのないジャンプを行う巨漢。
しかし、その全体重が、グルゥの腹の上に一気にのしかかる。
「が――」
胃液を吐いたグルゥは、ガクガクと痙攣して、全身の力を失い大の字になった。




