18.再会とおっさん―8
一方、ビルブーはまだ生きていた。
「クソッ! クソッ! 糞糞糞ッ!! とんでもないヤツだ、人の腕を力づくで捻じ切るなんてッ! これだから、『サタン』のような野蛮な種族は嫌いなんだッ!!」
手近なフォルの結晶に近付くと、残っていた左手で、力任せに結晶を殴りつける。
そして砕けた破片を、獣のように這いつくばって摂取した。
「こうなりゃヤケだッ!! 『サタン』の親父に、ワシに逆らったことを後悔させてやるッ!! オーバードーズだッ!!」
ビルブーの体に変化が現れる。
それはグルゥが魔獣化する工程と、同じような変化だった。
残っていたズボンが弾け飛んで、さらに膨らんだ脚に、ビッシリと黒い剛毛が生える。
元々せり出していた腹も膨らんで、鼻は丸く突き出し、さながらそれは、巨大な“豚”のような姿だった。
「フゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」
千切れた手と残された手。
両方が蹄の形へと変化していき、ビルブーは完全に四足の獣の姿になる。
「これは……ペットのキマイラの方が、まだ可愛げがあったな」
五メートルは超える巨体へと変化したビルブーに、さすがのグルゥも顔を引き攣らせながら対峙する。
敵も魔獣化したということは、こちらも魔獣化して、ようやく互角。
初めて相手にする魔人に対して、自身も無事では済まないだろうと、グルゥは泥仕合になる覚悟を決めるのだった。




