18.再会とおっさん―7
「あぎゃあああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
グルゥの怒りはそれだけでは収まらず、握り潰した手首にさらに力を込め、力任せに引き千切った。
右手を失ったビルブーは、地面の上をのたうち回りながら、怨嗟の言葉を吐く。
「きっ、きききき貴様ぁぁぁッ!? 死んだはずではッ!!」
「死んだ……というより確かに心臓は止まっていたのだろうな。だが、まだ脳は動いていた。キットの悲鳴を聞いて、『憤怒』の感情が、私の心臓を再び鼓動させたのだ」
ドクン。ドクン。ドクン。
『憤怒』がピークに達した時に現れる、身体の変貌の兆候、それが心臓の鼓動だった。
今回は偶然とはいえ、完全に脳に酸素が行き渡らなくなる前にキットの声が届いたのが、良い方向に働いたのである。
「親父……親父、親父、親父、親父、親父ぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
キットは号泣しながらグルゥに抱きついた。
そして、ずっと溜め込んでいた感情を爆発させ――ピンクの舌で、グルゥの顔をべろべろと舐め上げる。
「う、うおっ!? キット、さ、さすがにそれは――」
「いいだろ、これくらい……。だって、死んじゃったと思ったんだ。オレのせいで、また大事な人がいなくなると思ったんだっ」
随分と、心細い思いをさせてしまった。
グルゥはキットの思いをしっかりと受け止めるように、小さな体を、大きな腕でしっかりと抱き締めた。
「ぐ、ぐえっ、それはちょっと苦し――」
「馬鹿者。……お前の泣き声を聞いていたら、おちおち死んでもいられなくなったってことだ」
今までの、キットを慰めるための抱擁とは違う、固い、固い抱擁。
それは互いの存在と絆を確かめ合うための、力強い抱擁だった。




