18.再会とおっさん―6
グルゥの心臓は止まって、サリエラも気を失った。
一人残されたキットは、ガクガクと膝を震わせ、絶望的な状況に体を押さえる。
ビルブーがのしのしと近付いてきていたが、グルゥの側から離れる気はなかった。
このまま穢されるくらいなら、いっそグルゥと共に死んでしまおうと。
そう考えて、鋭く伸びた犬歯で舌を噛もうとする。
しかし、
「そんなつまらないこと、しないで欲しいのぉー」
隆起した大地が、キットの腹を殴りつけた。
たまらず、地面の上に這いつくばるキット。
そこに、ビルブーがついに到着した。
「自分の命を粗末にするとは、悪い子ちゃんだのぉ。どれ、まずは危険がないように、その歯を全部引き抜いておこうか。アレを食い千切られては、ワシもたまらんからなっ」
ビルブーは下品極まりないことをのたまいつつ、キットの顎を掴んで固定すると、その口の中に太い指を突っ込んだ。
キットは涙を流しながら嗚咽する。
「あ、ああぁ……あああああぁぁぁぁぁっ!!」
「うん? こんなに伸びておったかな、この犬歯は。まあいい、一番危なそうなコレから抜いてしまおうか」
ビルブーはキットの右上の犬歯を掴むと、一気に力を込め、その歯を根元からへし折ろうとする。
「あああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
キットの絶叫が轟いた、その時だ。
「おい」
ビルブーの丸々太った手首を、さらに一回り大きな手が、強く握り締めていた。
「私の娘に、手を出すな」
一瞬で手首を握り潰すグルゥ。
泣き喚くのは、ビルブーの番だった。




