18.再会とおっさん―3
「が……っ!?」
全身から力が抜け、せっかく捕まえたはずのキットは、腕の間からすり抜けていった。
何故、という疑問がグルゥの頭の中に浮かぶ。
キットのダガーには魔法の力がエンチャントされたような様子もなく、ダガー自体もごく普通のものなのに。
流れる血が止まらない。
致命的な一撃だった。
膝をついたグルゥの顔面に、キットは容赦なく、次の一撃をお見舞いしようとする。
「お父様っ!?」
響くサリエラの悲鳴。
とっさに左手を犠牲にダガーを受け止めたが、あと一歩遅ければ顔が真っ二つに斬り裂かれていた。
「ん」
次の攻撃に移ろうとダガーを引き抜こうとするキットだが、なかなか抜くことが出来ずに困惑する。
それは、グルゥが貫かれた左手に力を込め、手の筋肉でダガーの刃を捕らえたからだった。
「も、もう……こんなことは止めるんだ、キット」
思わぬ抵抗にあい、キットは力任せにダガーを引き抜こうとする。
その度に激しい痛みがグルゥを襲ったが、今はそれよりも、キットを離さないことの方が大事だった。
「すまん、すまんなキット。私が遅かったせいで、とても怖い思いをさせてしまったよな」
「う……うぅ……?」
グルゥの言葉に、キットは僅かに反応を示した。
これなら、まだいけそうだと、グルゥは続けて言葉を重ねる。




